最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)790号 判決 1955年3月25日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
理由
上告人等代理人弁護士後藤陸朗の上告理由第一点について。
論旨は原判決の証拠の採否、事実認定を非難するに帰し適法な上告理由に当らない。
同第二点について。
原判決は本件火災による賃借工場の滅失は上告人柴田の責に帰すべき事由によるものと認定判示しているのであつて、所論の如く同上告人の使用人等の過失に原因するものとは必らずしも認定していないのであるから、論旨は原判決の認定していない事実を前提とするものであつて、適法な上告理由に当らない。
同第三点について。
所論「失火ノ責任ニ関スル法律」は「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス……」と規定するところであつて、債務不履行による損害賠償請求の本件に適用のないことは明らかであるから、論旨は採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)